ウルトラマンタロウ感想|家族に支えられた光太郎が、最後は人間として戦う

「ウルトラマンタロウ」(第2期ウルトラシリーズの到達点)のアイキャッチ ウルトラシリーズ

白鳥家で暮らし、ZATに支えられ、ウルトラの母に救われる。その光太郎が、最後にはバッジを返す。人間として戦うのが、タロウの終わりだ。1973年放送開始。僕は明るい居場所と、この自立の選択を一緒に楽しみたい。

『ウルトラマンタロウ』とは何か──第2期ウルトラシリーズの到達点

本作では、前作『ウルトラマンA』から続くウルトラ兄弟の共演に、ウルトラの母とタロウの親子関係が加わります。ウルトラの父・母の実子であるタロウを中心に、ウルトラファミリーの描写が広がりました。

僕は、白鳥家、ZAT、ウルトラファミリーという三つの居場所があることに惹かれます。日常と戦いの間で、光太郎は一人きりにならない。家族の物語が、怪獣を倒す話の外側へ取ってつけられていないのがいい。

明るい暮らしの隣に、激しい戦闘がある。その振れ幅が、僕には本作ならではの楽しさです。親しみやすい世界だからこそ、バードンのような強敵が来たとき、助けの意味も強く感じます。

東光太郎の成長──「隣のお兄さん」から「自立する青年」へ

主人公・東光太郎(演:篠田三郎)は、歴代ウルトラシリーズの中でも極めて特異な存在です。 彼は防衛チームのエリート隊員ではなく、「世界を放浪してきたボクサー志望の青年」として登場します。 この設定は、組織の論理に縛られない自由な精神の持ち主であることを示すとともに、視聴者にとって親しみやすい「隣のお兄さん」的な存在として機能しました。

重傷を負った光太郎がウルトラ5兄弟に救われ、母から新たな命を授かる第1話。僕には、これが死と再生の物語として映ります。人間の光太郎と、父・母の実子であるタロウは区別しつつ、救われることから始まるヒーローとして読んでいきたい。

一方で、光太郎の日常生活は極めて庶民的です。 ZATに入隊した後も基地には住まず、白鳥健一少年(演:斎藤信也)の家に居候するという生活を送ります。

食卓を囲み、子供と遊び、失敗もする。その日常があるから、僕には光太郎が近い存在に映ります。怪獣との戦いで守るものが、白鳥家での暮らしへつながる。非日常の戦いに、守る日常の顔がある。ここに家族の物語の強さを感じます。

最終回の衝撃──変身を拒否して「人間として生きる」選択

最終回「さらばタロウよ!ウルトラの母よ!」では、光太郎はまずタロウとしてサメクジラを倒します。その後、健一へ人間の力で生きる姿を示すため、バッジをウルトラの母へ返し、バルキー星人と人間として戦う。僕は、最後の戦いへあえて変身能力を手放す選択が、この物語の着地点だと考えます。

光太郎は石油コンビナートを利用し、ZATガンでバルキー星人を撃破します。超人の力を使わず、知恵と勇気で戦う。そして宇宙へ帰るのではなく、雑踏へ消え、人間として旅立つ。僕には、成長と自立というテーマの完璧な着地点です。健一に生き方を説くだけでなく、自分もそう生きる姿を見せます。

宇宙科学警備隊ZATの独創性──知恵とユーモアで戦う理想の組織

ウルトラマンタロウと共に戦う防衛組織「ZAT(ザット)」は、シリーズ史上最も個性的で人間味あふれる組織として知られています。 その特徴を決定づけているのが、美術担当・鈴木儀雄によるメカニックデザインです。 スカイホエール、コンドル1号、スーパースワローといった主要機体は、赤や黄、青といった鮮やかな色彩を基調とし、従来のSFメカニックの常識を覆すような生物的で複雑なフォルムを特徴としています。

赤や黄色の鮮やかさ、生物を思わせる複雑な形。僕には、ZATの機体は画面を華やかにしながら、科学への期待も感じさせます。こういうメカが飛ぶ世界の明るさも、本作を楽しむ理由の一つです。

怪獣の性質を利用する発想にも、本作のユーモアがあります。第43話「怪獣を塩漬にしろ!」では、モットクレロンをタロウが塩漬けにして、小さくします。ZATの作戦だけに限らず、身近な発想を巨大怪獣への対処にまで広げる。その面白さを僕は感じます。

朝日奈隊長(名古屋章)、荒垣副隊長(東野孝彦)、森山いずみ隊員(松谷紀代子)らが互いを支える。僕にはZATが、任務の組織であると同時に、光太郎のもう一つの家族にも見えます。怪獣と戦う場所にも、帰れる関係があるのがいい。

ウルトラファミリー──父・母とタロウの親子関係

ウルトラの父・母とタロウは実の親子です。一方、ウルトラ兄弟という呼び名は、戦士たち全員が同じ両親から生まれた実の兄弟という意味ではありません。血縁の親子関係と、仲間としての兄弟の絆を区別すると、本作の家族像を理解しやすくなります。

第19話で、バードンに倒されたタロウを母が復活させ、キングブレスレットを授ける。僕は、この救済に母と子の結びつきを感じます。強い戦士だから、誰の助けも要らないわけではない。そのことを、家族の関係で見せる場面です。

ペギー葉山の穏やかな声が、僕にはウルトラの母の優しさを感じさせます。宇宙の超人なのに、その声とやり取りで家庭のような近さが生まれる。壮大な世界の中にも、母の優しさが届く。ファミリーが身近に映る大きな理由です。

ウルトラホーンを見ると、僕は父と子のつながりを感じる。台詞で親子を説明する前に、姿にも残っている。あの角まで、ウルトラファミリーの一部なのがいい。形の話をしていても、家族の話へ戻ってしまう。

タロウの戦闘能力と特撮技術の進化──光の国のエリートを支えた職人技

タロウは光の国のエリートとして訓練を受けており、その格闘能力および光線技は、歴代兄弟の中でも屈指の完成度を誇ります。 身長53メートル、体重5万5千トン、飛行速度マッハ20という基本スペックは、兄弟の中でも最高クラスの数値を示しています。

格闘面での最大の特徴は「スワローキック」です。 空中で何度も回転し、その遠心力と落下速度を乗せて放つこのキックは、変身直後の牽制や決定打として多用されました。 このダイナミックなアクションを実現するために、ピアノ線による吊り撮影や、複数のカットを繋ぎ合わせる編集技術が駆使されました。

ストリウム光線は、構えから発射まで色鮮やかです。僕は、格闘の力強さと、光線の華やかさを両方楽しめることがタロウの魅力だと感じます。強さの見せ方が、重い身体の動きだけに留まらない。

「ウルトラダイナマイト」は全身をエネルギーで燃え上がらせ、敵に体当たりして爆発する自爆技で、「ウルトラ心臓」が無事であれば再生可能という設定は、タロウの驚異的な生命力を示しています。 「キングブレスレット」は、ウルトラの母から授かった万能兵器で、状況に応じて千変万化の機能を発揮する多機能性は、タロウが力だけでなく知恵で戦うヒーローであることを象徴していました。

印象的な怪獣とエピソード群──絶望と希望、伝承と現代の融合

本作には、ウルトラシリーズ史上最強クラスの怪獣から、コミカルで幻想的な怪獣まで、極めて幅広いキャラクターが登場します。

タロウに続き、ゾフィーも倒されるバードン編。母の力で復活したタロウが、再び挑む。僕にとって忘れがたい三部作なのは、強い戦士にも助けが必要だと描くからです。家族の支えは、明るい日常だけでなく、こうした危機の中でも力になります。

第40話に登場した暴君怪獣タイラントは、過去にウルトラ兄弟に倒された怪獣・宇宙人の怨念が合体した存在です。 竜巻怪獣シーゴラスの頭部、宇宙大怪獣ベムスターの胴体、殺し屋超獣バラバの両腕など、ファンには懐かしい構成要素から成るタイラントは、冥王星から地球へ向かう途上でウルトラ兄弟を次々と撃破します。

地球でタイラントを迎え撃つタロウは、兄たちの敗れた強敵に立ち向かい、撃破します。「ウルトラ兄弟を超えてゆけ!」という題名を、僕は末っ子が自分の戦いを引き受ける物語として読みます。助けられることと、自立することの両方がある。

オカリヤン、モチロンなど、童話や伝承を思わせる怪獣もいます。個々の回と後半の「日本の童謡から」シリーズは分けつつ、僕が面白いと感じるのは、身近な物語から怪獣の世界へ入れることです。宇宙の壮大さと、暮らしの身近さが一緒にあります。

映像商品と後の作品への客演──タロウから次世代へ

2017年発売のBlu-ray BOXは「HDリマスター2.0」を採用しています。特典のノンテロップOPとタイトルバック編集前映像には35mmネガの新規リマスター版が収録されています。この35mmという仕様を本編全体の撮影原版と混同しないようにしたいところです。

HD映像では、怪獣やミニチュアの細部にも目を向けられます。ノンテロップOPと編集前のタイトルバック映像は別々の特典であり、完成した画面と制作素材を見比べられる点にも価値があります。

テレビシリーズ終了後のタロウは、光の国の重鎮として次世代の戦士たちを導く役割を担っています。 『ウルトラマンメビウス』では宇宙警備隊筆頭教官として若きメビウスの師となり、かつての末っ子としての奔放さは影を潜め、厳格さと慈愛を兼ね備えた指導者としての姿を見せました。

2019年の『ウルトラマンタイガ』では、タロウの実子であるウルトラマンタイガが登場し、「偉大な父」としての重圧を息子に与えてしまう側面も描かれました。 特に悪の戦士ウルトラマントレギアが、かつてタロウの無二の親友であったという設定は、完璧なヒーローであることの孤独や残酷さを浮き彫りにし、タロウの物語に新たな深みを与えました。

母や兄弟に救われ、家族のような仲間と戦った光太郎が、最後には変身せずに立ち向かう。僕は、この流れを成長と自立の物語として評価します。支えられた時間が、自分で生きる選択へつながる。明るさを味わった後に、この最終回まで語りたい。

白鳥家も、ZATも、ペギー葉山の声も親しみがある。その横では、色鮮やかなメカと激しい戦いがある。そして最後は、人間の知恵と勇気だ。僕にとってタロウは、明るい家族に包まれて終わるだけではない作品なのだ。

『ウルトラマンタロウ』を読む五つの視点

視点注目したい描写
救済バードン編でのタロウの復活とウルトラの母の助け
自立最終回のバッジ返却と光太郎自身の戦い
家族父・母とタロウの親子関係、白鳥家とZATの支え
知恵怪獣の特徴を利用するZATの作戦
日常白鳥家での暮らしと怪獣との戦いのつながり

第2期ウルトラシリーズの主人公と防衛組織

作品・放送年主人公と防衛組織
帰ってきたウルトラマン(1971〜1972)郷秀樹/MAT
ウルトラマンA(1972〜1973)北斗星司・南夕子。途中から北斗単独で変身/TAC
ウルトラマンタロウ(1973〜1974)東光太郎/ZAT
ウルトラマンレオ(1974〜1975)おおとりゲン/MAC

次に読むなら

参考資料

円谷プロ:Blu-ray BOX作品解説/円谷プロ:Blu-ray BOX収録仕様/放送ライブラリー:第1話・放送期間とスタッフ/文化庁:日本特撮に関する調査報告書/講談社:モットクレロン第43話の展開/講談社:最終回と人間としての戦い

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