仮面ライダーX感想|ライドルとセタップがいい。変わっていく敬介も観たい

「仮面ライダーX」(未来を先取りした革命的ヒーローの全貌)のアイキャッチ 仮面ライダー

『仮面ライダーX』――武器、好敵手、強化を楽しむ一作

『仮面ライダーX』を、後年の作品の先駆けという言葉だけで片づけたくありません。ライドルを使い分ける細かさ、アポロガイストとの張り合い、敗北のあとに変わる身体。一つの作品の中で、楽しむ場所が次々に移っていく。その落ち着かなさも含めて語りたい一作です。1974年2月16日に始まった、シリーズ第3作に当たります。

「深海開発用改造人間カイゾーグ」。この言葉から、もうSFの匂いがする。水圧に耐え、水中で働く身体が敵と戦う。僕はXで、武器の格好よさの向こうに未知の海まで感じたい。

Xは太陽エネルギーと風力エネルギーを融合し、プラズマエネルギーへ変換して活動するという設定です。水圧は耐えなければならない環境条件であり、動力源ではありません。複数の装置が役割を分担する身体には、機械としてのヒーローを描く面白さがあります。

武器の使い分け、好敵手、途中の強化。現在のライダー作品と見比べる楽しさはあります。でも僕が見たいのは、発明の順位だけではありません。それらが神敬介の戦いにどう組み込まれたかです。装備の機構と、父の遺志を継ぐ青年のドラマ。その両方を追っていきます。

深海開発用改造人間「カイゾーグ」:科学的リアリズムの導入

父が息子を改造する:血縁ドラマの革新

物語の主人公、神敬介は沖縄の水産大学に通う青年として登場します。彼の父、神啓太郎は城北大学で人間工学を研究する権威であり、その研究は本来、平和的な深海探査技術の発展に貢献するはずのものでした。しかし、日本壊滅を企む闇の政府「GOD機関」が啓太郎教授の頭脳に目をつけたことで、平穏な親子の日常は崩壊します。

瀕死の教授は、愛する息子の命を救うため、そしてGODの野望を打ち砕く唯一の対抗手段として、自らの命を賭して敬介に改造手術を施します。この「父による息子の改造」という設定は、初代仮面ライダーの本郷猛が「敵組織ショッカーによって改造された」ことと対照的です。

  • 初代の構造: 敵に改造された被害者が正義のために戦う
  • Xの構造: 父の愛と科学技術によって蘇った戦士が遺志を継ぐ

父の手術で救われた身体が、そのまま父の遺志を背負う身体になる。ここには、科学技術を使う人の意志を問う物語が見えます。敬介は襲撃された被害者であり、同時に継承者でもある。装備が面白いほど、それを誰が何のために作ったのかにも目が戻るのです。

カイゾーグの装備と70年代SF的発想

カイゾーグは深海1万メートルでの活動を想定した改造人間です。以下は作品内の設定であり、実在する深海探査技術の性能を示すものではありません。

装備・機能作品内の設定
耐圧構造深海1万mの水圧に耐える
酸素供給強化肺などによって深海で活動する
動力太陽と風力からプラズマエネルギーを得る
レッドアイザー掲げることでマスクが装着される変身ツール
パーフェクター口部の装備。太陽・風力エネルギーを融合する機構を内蔵

僕には、水中で動く身体と、戦う身体が結び付くところが面白い。装置ごとに役割があり、ヒーローの身体を機械として想像できる。「科学的リアリズム」という評価も、架空の機構を実現可能だと考えるからではなく、仕組みをたどる楽しさを指しています。

ライドルとクルーザー:道具を使い分けるアクション

4つの形態が生む戦略性

本作の戦闘を特徴付けるのが、万能武器「ライドル」です。前作のライダーマンにもカセットアームという武装があったため、ライダーが武器を使うこと自体をXの発明とはいえません。Xでは、ベルトから取り出したグリップを変形させ、複数の用途に使い分けるアクションが大きな見せ場になっています。

ライドルには4つの形態が存在します:

  • ライドルホイップ(W): フェンシングの剣のような形状。敵を突く、あるいは「X字」に切り裂く精密攻撃が可能。変身直後の名乗りポーズでも使用され、作品の象徴的イメージを形成しています。
  • ライドルスティック(S): 棒状武器。打撃のほか、高速回転させて「ライドル風車」となり、敵の攻撃を跳ね返す防御兵器としても機能します。
  • ライドロープ(R):最大30mまで伸びるロープ。敵の拘束や、高い場所に掛けての移動に使います。
  • ライドルロングポール(L): 最大10メートルまで延伸するポール。超高度ジャンプの補助や、遠距離攻撃に活用されます。

ライドルは、相手との距離や地形に応じて使い方が変わる。この道具の選び分けに、僕は後年のフォームチェンジにも通じる楽しさを感じます。形が変わった、その次に何ができるのかを見たい。剣、棒、ロープ、長いポールという違いが、Xの身体の動きまで変えるのです。

クルーザーの「白い弾丸」が示した可能性

専用バイク「クルーザー」は白い車体が印象的な、水中・水上でも活動できるマシンです。前面の二つのプロペラは潜航や飛行に使われ、陸上では風を取り込む機能も持つという設定です。

項目クルーザーの設定値
全長2250mm
全高1240mm
重量330kg
最高時速700km/h
最高出力1500馬力
ジャンプ力200m

クルーザーはXの脳波による制御で無人走行できるという設定も持ちます。乗り手の呼び掛けに応じて駆け付けるマシンは、単なる移動手段以上の頼もしさを感じさせます。この架空の脳波制御を、現実のAIや自動運転技術と同じものと捉えることはできません。

アポロガイストという転換点:ライバルキャラクターの確立

GOD機関:闇の政府という発想

敵組織「GOD機関(Government of Dark)」は、それまでの「悪の秘密結社」という枠組みを超えた設定でした。東西冷戦下において対立する大国同士が、水面下で手を結んで設立した「闇の政府」。この設定は、1970年代の国際情勢に対する風刺を含んでおり、表向きは対立しながら裏では共通の利益のために協力する大国の姿を反映していました。

好敵手との共鳴が生んだ名シーン

白いスーツのアポロガイストは、打田康比古が演じる宿敵だ。冷徹な行動とあの姿が、好敵手として印象に残る。東映ガイドではライダーシリーズ初のライバルキャラクターと紹介されている。

アポロガイストを、潔い武人の一言で済ませたくありません。非情な作戦を実行する敵でありながら、Xの力を認める。危険な相手だと分かっているのに、二人の対決を見たくなる。敵としての恐ろしさと、好敵手への感情が同居するから、この関係には引力があります。

第14話でXを好敵手と認める言葉を残したのち、再生アポロガイストとして再登場します。この第14話の場面と、再生後の最終決戦は分けて読む必要があります。敵の復活によって対決が続く構成が、Xとの関係を強く印象付けます。

路線変更という試練:「セタップ」から「大変身」へ

装着の手順を見せる「セタップ」

初期の変身では、敬介がレッドアイザーを右手で掲げると、顔の左半分、右半分の順にマスクが装着されます。続いて口部にパーフェクターを装着して変身が完了します。レッドアイザーそのものを眼に取り付ける手順ではありません。

顔が順に組み上がり、口部の装備が収まって変身が終わる。僕には、その工程の細かさがXの魅力です。改造人間という設定を、説明だけでなく変身の手順でも見せる。完成した姿まで待つ時間にも、機械的な身体の面白さが詰まっています。

マーキュリー回路と真空地獄車

第28話「見よ!Xライダーの大変身!!」では、風見志郎が敬介の胸部にマーキュリー回路を埋め込みます。身体能力が強化され、従来の装着動作を必要としない「大変身」が可能になります。

強化後は肉弾戦や必殺技「真空地獄車」が目立つようになります。しかし、ライドルを完全に使わなくなるわけではなく、最終回の呪博士との戦いでもライドルホイップを使用します。戦い方の重点が変わった、と捉えるのが適切です。

先輩ライダーの助けを受けて、敗北から立ち上がる。僕には、この強化が本作の大きな見せ場です。変身も戦い方も変わるので、敬介の再出発が身体そのものに表れる。ただ能力が増えたという以上に、人に支えられてもう一度戦う展開として受け止めたい。

キングダーク、RS装置、呪博士:巨大な悪との最終決戦

巨大な敵の存在感

物語後半で登場する巨大ロボット大幹部「キングダーク」は、全長26メートルに及ぶ巨大な存在でした。普段はアジトの奥で右手で頬杖をついた涅槃仏のようなポーズで横たわっており、その巨体から放たれる目からの光線や口からの毒ガスは、等身大のXライダーを圧倒する存在感を放ちました。

キングダークは、横たわっているだけで厄介そうに見える。人間大のXと、簡単には届かない巨体の対比が強烈です。怪人と殴り合うときとは、画面の重さが違う。動きの細かさを楽しむライドル戦のあとに、この大きな脅威が置かれる。その振れ幅もXらしい。

RS装置の設計図が、一話ごとの事件をつなぐ

後半戦では、南原博士が開発した「RS装置」の設計図をめぐる争奪が、戦いの軸になります。GODはキングダークに組み込むため、この装置を狙います。個々の怪人を倒す戦いに、設計図を奪われないよう守るという継続的な目的が加わるのです。

キングダークは第22話に登場します。後半の設計図争奪戦では、一話ごとの事件と、敵の計画を阻む長い戦いが並行します。設計図という具体的なアイテムが、物語の次の動きを追いやすくしています。

最終回で登場する呪博士は、キングダークを内部から操るGODの大幹部で、神啓太郎の旧友です。東映の図鑑では、GOD総司令と同一人物かどうかは判然としないとされています。父の友人が敵であることは、敬介の戦いを再び父とのつながりへ引き戻します。

石ノ森章太郎のデザイン:機械的なヒーローへの試行錯誤

石森プロが公開しているラフスケッチには、カミキリムシやクワガタ、カタツムリを思わせる案などが残されています。メカニカルなライダーの形にたどり着くまで、さまざまな発想が試されていたことが分かります。

完成したXだけを見ると一つの確定したデザインに見えますが、ラフを見比べると、昆虫や水中活動のイメージをどう組み合わせるかという探索が見えてきます。テレビ本編の装備を知ってからデザイン案を見ると、その違いも楽しめます。

先輩ライダーとの共闘と、後年の再登場

1974年の映画『五人ライダー対キングダーク』では、1号、2号、V3、ライダーマン、Xの五人が共闘します。歴代ヒーローが並ぶ楽しさを味わえる作品です。先輩ライダーとの共演自体は以前にもあり、クロスオーバーという考え方すべての起点を本作に求めることはできません。

2014年の映画『平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊』には、速水亮が再び出演しています。世代を越えた共演のなかで、神敬介という人物の存在を改めて楽しめる点も、Xを見返す入口になります。

まとめ――「X」の未知の世界と、父の遺志を継ぐ青年

親子の悲劇、メカニカルな装備、好敵手との対決、巨大な敵。『X』には違う楽しみが重なり、時には矛盾も残ります。僕は、その変化をきれいに均して評価したくありません。初期の手触りと後半の戦い方の違いまで、同じ作品の中で味わえるところを残したいのです。

ライドルの選び分けも、強化も、好敵手も、巨大な敵も語りたい。後年の作品と似た要素を探すのは楽しいけれど、それだけで直接の影響関係を決めるつもりはありません。Xの装備や対決は、この作品の場面として面白い。まずそこから振り返りたいと思います。

見どころ注目したい点
ライドル相手との距離に応じた形態の使い分け
アポロガイスト危険な敵でありながらXを認める関係
マーキュリー回路先輩ライダーの手術による強化
設計図争奪戦個別の事件をつなぐ継続的な目的
キングダーク人間大のヒーローと巨体の対比

僕には「X」の文字も、未知の可能性を連想させます。深海へ向かう身体と、父の遺志を継いで戦う身体が同じ青年にある。機械的な装備を楽しみながら、そこへ託された人の思いにも戻れる。この二つが並び立つところに、Xの個性を感じます。

作風も戦い方も、途中で変わる。きれいに揃わないところはある。でもライドルの動き、宿敵の姿、強化後の敬介まで、僕には観たいものが残る。留保があっても、語りたい場所がこんなにある。そこまで、Xの面白さだ。

次に読むなら

参考資料

東映・仮面ライダーX作品ガイド/仮面ライダー図鑑・Xの装備/レッドアイザー/ライドル/クルーザー/マーキュリー回路/キングダーク/呪博士

石森プロ・ヒーローデザインのラフ紹介/東映ビデオ・平成ライダー対昭和ライダー

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